異なる目線で語る、アート 『美術手帖』1月号新着ブックリスト
右から『カルティエ=ブレッソン─二十世紀写真の言説空間』、『雑めく心─奇想的思考あふれるエッセイ集』、 『現代美術コレクター』、『映画と歩む、新世紀の中国』の表紙

異なる目線で語る、アート 『美術手帖』1月号新着ブックリスト

『美術手帖』の「BOOK」コーナーでは、新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を紹介しています。2017年1月号では、研究者、画家、コレクター、ライターという、それぞれ異なる立場でアートシーンに関わる著者が手がけた4冊を取り上げます。


佐々木悠介 著『カルティエ=ブレッソン─二十世紀写真の言説空間』

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 これまでの写真史研究は、作品の価値判断を大きく左右する言葉の問題や写真が生まれる背景にある時代思潮を十分に掘り下げてこなかった。こうした強い問題意識のもと、筆者は言説分析に重きを置いてアンリ・カルティエ=ブレッソンの神話解体に挑む。1933年の初個展で提示された作家像を読み解くほか、ドキュメンタリー写真との比較などからブレッソンをめぐる言説がいかに形成されたかを探る。ブレッソン研究に新機軸を打ち出した労作。(中島)

佐々木悠介=著
水声社|6000円+税

谷川晃一 著『雑めく心─奇想的思考あふれるエッセイ集』

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 画家・谷川晃一が日々の雑感を心赴くままに書き綴ったエッセイ集。誰にでもできる抽象画の描き方を大人に伝授したり、児童画の傑作を集めた美術館を夢想したり、趣味の雑貨集めから活動を広げたり、制作の気力が湧かない酷暑にダジャレ俳句の「雑俳」をひねり出したり。脇道に逸れる愉しさを知っている著者ならではの、ユーモアと好奇心に満ちた日常が素直に伝わる。石子順造、井上洋介、加納光於ら、在りし日の友人・知人を回顧する眼差しも温かい。(中島)

谷川晃一=著
せりか書房|2400円+税

高橋龍太郎 著『現代美術コレクター』(講談社現代新書)

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 現代美術のコレクターである精神科医・高橋龍太郎が、自身のコレクション形成の経緯と作品購入の楽しみを綴った新書。日本人作家の作品に特化した2500点を越える筆者のコレクションは、日本の現代美術の特質や傾向を浮き彫りにし、過去数十年の変遷をたどるものだ。そんな貴重なコレクションを国内外で惜しみなく公開し、日本の現代美術を称賛、作家たちを激励する著者の姿からは、現代美術作品購入の醍醐味が伝わってくるだろう。(松﨑)

現代美術コレクター』(講談社現代新書)
高橋龍太郎=著
講談社|800円+税

多田麻美 著『映画と歩む、新世紀の中国』

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 2000年より北京で暮らす著者がリアルタイムで追いかけてきた21世紀の「中国映画」案内。台湾映画や香港映画とは異なり、大陸映画は隣国の我々にもいまだ馴染みが薄い。表現への規制が厳しい中国で、映画製作者や出演者たちはどのような葛藤と向き合っているのか。「歴史をたどる」「現代中国の諸相」の2部構成で、中国史や同国の社会問題を踏まえながら、映画作品の中に込められたメッセージや革新性についてわかりやすく解説する。(松﨑)

多田麻美=著
晶文社|2100円+税

中島水緒[なかじま・みお(美術批評)]+松﨑未來[まつざき・みらい(ライター)]=文
『美術手帖』2017年1月号「BOOK」より)

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