期待のアーティストに聞く! 「誰が袖」を描く升谷真木子
Satoko Oe Contemporaryにて Photo by Fuminari Yoshitsugu

期待のアーティストに聞く! 「誰が袖」を描く升谷真木子

スカーフの柄を思わせる模様に日常の風景を落とし込んだ絵画作品などを発表している、1982年生まれの升谷真木子(ますたに・まきこ)。Satoko Oe Contemporary(東京・清澄白河)で11月5日まで、新作・近作による個展「Whose sleeve?」を開催している升谷に、作品について聞いた。


画面をたゆたう記憶と残り香

 澄んだ色彩がかたどる、縄跳び、グラス、植物、水瓶などの多彩なモチーフ。升谷真木子の絵画には、様々な質感・触感をもつ工業製品や植物が折り重なって描かれる。それらは画面に規則的に配されることでスカーフを思わせる図像を見せ、時に散り散りに構成され、ひとつのリズムを形成する。

「幼少期の感覚が現在の制作につながっています。印象的な瞬間を場の空気と一緒に閉じ込めたい。それが再現されたとき、誰かの記憶とリンクをするのなら、なお嬉しいです」。誰もいない真夏の公園で、強い日差しがくっきりと影をつくる光景を眺めた日々。それは幼少の作家にとってはあたかもジョルジョ・デ・キリコの絵画の世界に入り込むかのような時間であり、絵画制作の根底にある原体験のひとつなのだという。

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升谷真木子 in the cold morning 2016

 Satoko Oe Contemporaryにて10月1日から11月5日まで開催中の個展「Whose sleeve?」では、新作、近作など約10点を発表。本展タイトル「Whose sleeve?」とは、江戸時代より女性の間で愛用される、香料を詰めた小さな布袋「誰が袖(たがそで)」、そして桃山・江戸時代に流行した「誰が袖図」を背景とする。衣桁に様々な着物が掛け並べられた様子が屏風などに描かれる「誰が袖図」では、見る者が美しい衣裳を愛で、香りをイメージし、それらを着る人の面影をしのぶなど、それぞれの経験と想像に基づく発見が促されている。

 そしてそれは、升谷の作品でも同様に志向されてきたものでもある。真夏の公園、風にたなびくカーテン、冷たい外気が肌を刺す冬の朝。作家自身、そして私たちが見てきた普遍的とも言える記憶と光景は、「誰が袖」となった絵画に誘発され、残り香のように目の前に立ち現れる。

文=野路千晶
『美術手帖』2016年11月号「ART NAVI」より)

升谷真木子「Whose sleeve?」
会期:2016年10月1日~11月5日
会場:Satoko Oe Contemporary
住所:東京都江東区白河3-18-8
電話番号:03-5809-9517
開館時間:12:00~19:00
休館日:日、月、祝
URL:www.satokooe.com
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