期待のアーティストに聞く! 青柳菜摘が紡ぐ「日記」
横浜市の野毛山公園にて Photo by Fuminari Yoshitsugu

期待のアーティストに聞く! 青柳菜摘が紡ぐ「日記」

チョウの幼虫を探し求め、孵化させるまでの過程を自身の日常生活と織り交ぜながら映し出す「孵化日記」など、自ら「メタドキュメンタリー」と名付ける手法を用いた映像作品を制作する、1990年生まれの青柳菜摘。若手作家を紹介するNTTインターコミュニケーションセンター[ICC](東京・初台)の企画「エマージェンシーズ!」で新作を発表する青柳に、作品について聞いた。


日常の先にあるナラティブを探して

 木々の間を歩き、立ち止まり、何かを探し歩く青柳菜摘の姿が映像に映し出されている。そして、自身によるどこか淡々として誠実なナレーションの声が、その「何か」が、あるチョウの幼虫であることを伝える。青柳が2011年より継続的に制作する「孵化日記」は、作家がチョウの幼虫を探し見つけ孵化させ、ときには羽化した成虫を元の場所に帰す過程を主軸に、成長の過程で見える生き死にと同列に家族旅行、妹の運動会などの日常の様子までもが織り込まれた映像インスタレーション作品だ。

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青柳菜摘 孵化日記 2015

 もともと絵本作家を志していた青柳は、ビジュアルと語りを通して、より複層的に物語を紡ぎうる映像に興味をもった。そして卵から孵化した後、葉の先に塔を思わせる葉の造形物を構築する「スミナガシ」の存在を知り、シリーズの制作は始まる。「外敵からの保護や巣のためか、そうではないのか。創作のために塔をつくっているようにも見え、一度観察してみたいと思いました」。スミナガシを求めて各地の山、丘陵、公園を訪ねる様子を通して、東京で育った作家と自然のあいだの距離は明らかにされる。そして、対象を撮影する青柳の姿も含めて記録後、自身と幼虫を同等に観察する視点で編集し、複数の画面やスクリーンに映し出すことで、「ドキュメント」における映像文法は脱構築される。作家は、自身の作品を「ドキュメンタリー」ではなく「メタドキュメンタリー」と定義する。

 NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]にて9月13日から11月20日まで開催される展示では、新たな幼虫との邂逅を見せる新作を発表。この「日記」は青柳、そして青柳を取り囲む人々の人生と交錯しながら続いていく、ひとつの「物語」の形式なのだ。

文=野路千晶
『美術手帖』2016年9月号「ART NAVI」より)

エマージェンシーズ!029 青柳菜摘
会期:2016年9月13日~11月20日
会場:NTTインターコミュニケーションセンター
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
電話番号:0120-144199
開館時間:11:00~18:00
休館日:月休(祝なら火)
URL:www.ntticc.or.jp
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