アートフェアが大集合! NY「アーモリーウィーク2016」
爆発的に拡大し続けてきた「モダン・コンテンポラリーアート」マーケット。2015年にピークを過ぎたとの見方も出始めたなか、アートマーケットのシーズンの皮切りとなる「アーモリーウィーク2016」には注目が集まった

アートフェアが大集合! NY「アーモリーウィーク2016」

アートマーケットの拡大とともに、次々と創設されてきたアートフェア。10年ほど前には数えるほどしかなかったが、いまでは世界中で大小合わせて年間300近くのフェアが開催されている。3月初旬、そのなかでも規模、集客数ともに最大級の「アーモリーショー2016」が、ニューヨークで開催された。「アーモリーショー」は1994年の発足以来、回を重ねながら拡大し、現在ではアートマーケットの1年を始動させる春の重要なイベントとなっている。フェアの週は「アーモリーウィーク」と呼ばれ、毎年マンハッタンで10を超えるアートフェアが同時開催される。今回は「アーモリーウィーク2016」から11のフェアをグループに分けて紹介するとともに、アーモリーウィークを最大限に楽しむコツ」をご案内したい。


事前リサーチで全アートフェアの攻略も可能

 「アーモリーウィーク」に開催されるフェアの数には圧倒されるが、日程と会場エリアのリサーチをしておくことで、フェアめぐりの効率は格段に上がる。エリアごとに行きたいフェアを決め、開場時間や優先度によって見る順番を考えておくと安心。

 今年のフェアは大きく分けて、マンハッタンの5つのエリアで開催された。

 エリア間の移動は、地下鉄・バスと徒歩の組み合わせがおすすめ。 自転車シェアリングシステムの「Citi Bike」を活用するのも楽しい。1日もしくは1週間パスを購入すれば旅行者でも利用が可能で、マンハッタンの風景を一味違った感覚で味わえる。

 入場待ちや会場での人混みを避けることができるのは平日や午前中。フェアのチケットは事前にオンラインで購入しておくと、入場もスムーズになる。

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アーモリーショー(コンテンポラリーエリア内)。土曜の午後は大混雑。会場外には数百人の入場待ちの列ができ、入場制限もかけられていた

メインストリーム・アートフェア

 11のアートフェアは、大きく4つのグループに分けられる。はじめは、量や質でフェアの醍醐味を堪能できる王道的なフェアのグループ。熱心なコレクターは開幕前から出展される作品を下調べしており、オープンとともに売約となる作品も少なくない。アートマーケットの華やかな雰囲気を楽しむなら必見のグループだ。

アーモリーショー (Armory Show・22回目)

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見きれないほど多くの作品が集まるアーモリーショー。「コンテンポラリー」セクションは今年も大混雑。世界各地から集まった迫力ある作品が延々と並ぶ。一方、有名アーティストの作品が並ぶ「モダン」は落ち着いた雰囲気。値段を聞けるのも楽しみ方のひとつだ

 今回は36か国から205のギャラリーが集まり、過去最大規模での開催となった。例年通りハドソン川沿いの倉庫2か所を会場とし、若手アーティストの作品が中心の「コンテンポラリー」と有名アーティストの作品が集まる「モダン」の2つのセクションに分けて展示が行われた。

 アーモリーショーでは毎年、特定の地域を取り上げた特集展示が組まれる。今年はアフリカ。植民地時代をルーツとする西洋文化との融合や、現代の移民問題といったアフリカの地政学的問題をテーマにした作品が数多く取り上げられた。

アートショー (The Art Show・28回目)

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有力ギャラリーが出展する「アートショー」。美術館で見かけるような作品が並ぶ。会場には有名アーティストの姿も。敷居は高いが出展者は気さくに質問に答えてくれる

 アメリカ国内で開かれるアートフェアの中で、もっとも古いのが「アートショー」。アメリカ・アートディーラー協会に加盟するギャラリーのみが参加するフェアで、今年は72のギャラリーが展示。有力ギャラリーが点数を厳選してプレゼンテーションを行った。会場はパークアベニューにあるアーモリーで、規模は小さく会場も落ち着いた雰囲気だが、経験豊かなコレクターが集まることで知られ、アート業界の注目度は高い。作品のクオリティは全フェアの中でも群を抜いていた。

エマージング系アートフェア

 エマージング(新興)・アーティストやエマージング・ギャラリーにフォーカスするのが2つ目のグループ。メインのフェアに比べて作品の価格帯がぐっと手頃になり、これからアート収集を始めようという人たちに最適のフェアだ。また、新人発掘のために美術館関係者が訪れることもあり、将来活躍しそうなアーティストを自分の目で探したいというこだわり派のコレクターも集まる。

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上2点──パルスの展示風景 下左──ボルタの展示風景 下右──スコープの展示風景。今年は緻密につくり込まれた作品やビビットな色合いの作品を多く見かけた

パルス (Pulse・11回目)

 ギャラリーだけでなくオルタナティブ・スペースやNPOなども積極的に迎え、アートコミュニティーへのネットワークを広げていく機会を提供している「パルス」。今年は45出展者での開催となった。若手コレクターを招待するプライベートカクテルパーティーも開催し、エマージングコレクター層の開拓にも力を注いでいる。

スコープ(Scope・16回目)

 アーモリーショーと並ぶ古株の「スコープ」は、エマージングアートの中でも「最も新しい表現」の紹介を謳っている。国内外から60の出展者を迎え、シンプルながら丁寧につくり込まれた作品が多く並んだ。

ボルタ (Volta・8回目)

 毎年アーモリーショーに隣接して開催される「ボルタ」は招待制の出展で、今年は100の出展者が選ばれた。スタジオを訪れたような雰囲気で作品をじっくり見てほしいという意図で、基本的に各ブース1アーティストのみの紹介をポリシーとし、展示内容を厳選している。

アンチ系アートフェア

 3つ目は「アンチ・アートフェア」を掲げる比較的新しいグループ。ブースできっちり区切られたアートフェア定番の形態を踏襲せず、独自の展示空間づくりにこだわる。出展者との隔たりがなく、気軽に作品について話を聞くことができるのが特徴。

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上2点──スプリング・ブレイクの展示風景。数十ある事務所スペースを思い思いに改造して展示に利用 下左──クリオの展示風景。iPadを越しに見ると、画像がアニメーションとなって動き出す作品も。アーティストが丁寧に見方を教えてくれる 下右──インディペンデントの展示風景。空間づくりへのこだわりが見えるフェア。エマージング、中堅、有名ギャラリーが軒を並べるのがユニーク

インディペンデント (Independent・3回目)

 今年からトライベッカへ場所を移し、43のギャラリーを迎えた「インディペンデント」。他のフェアでは見られない広いスペースの使い方と、窓からの眺望も手伝って、のびのびとした空間で作品を楽しむことができる。贅沢なスペースを割り当てられた作品は輝きを増すことが実感できるフェア。

クリオ・アート・フェア (Clio Art Fair・3回目)

 ギャラリーに所属せず個人で活動するアーティストを募り展示する「クリオ・アート・フェア」には、39のアーティストが参加した。アーティストが来場者に直接応対するので、作品について詳しく知ることができる。出展者の中にはMoMAやグッゲンハイムのコレクションに作品が収蔵されている実力者もいた。

スプリング・ブレイク (Spring/Break Art Show・5回目)

 「スプリング・ブレイク」は、歴史が浅いながらもキュレーターに軸足を置いた異色のフェアとして目立っている。今年は100名の若手キュレーターを招集し、マンハッタン最大の郵便局内にある旧事務所スペースを会場に、彼らが選んだ800名のアーティストの作品を紹介した。壁紙を貼り替えたり、壁を壊したりと、他のフェアでは味わえない思い切ったプレゼンテーションが楽しめた。

ジャンル特化型アートフェア

 多くのフェアがグローバル志向となり、マルチメディアアートの紹介にフォーカスする一方、近年増えているのが4つ目の「ジャンル特化型」のフェア。

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版画やドローイング、立体まで様々な形態になる紙メディア。まだまだ表現の可能性が残っているのを見せつけられた

ムービング・イメージ (Moving Image・6回目)

 ビデオ作品にフォーカスした招待制フェア。今年は25の出展者が参加した。19世紀に貨物輸送の倉庫としてつくられた歴史的建造物の中で展示が楽しめる。イスがたくさん用意され、ゆっくりと作品鑑賞できるよう配慮されている。長めに時間を確保して訪れたいフェア。

ニュー・シティ・アート・フェア (New City Art Fair・5回目)

 コンテンポラリー・アジアンアートの紹介を目的とするフェア。日本のhpgrpギャラリーが主催する。今年は日本から5つのギャラリーが集い、若手・新進気鋭の日本人アーティストを紹介した。規模はいちばん小さいものの、知る人ぞ知るニッチなフェア。

アート・オン・ペーパー (Art on Paper・2回目)

 今年で2回目の開催となる「アート・オン・ペーパー」は、紙をベースにした作品を紹介する。アートマーケットでは比較的注目度の低い紙メディアにあえてフォーカスすることで話題となっている。手頃でクオリティの高い作品が集まった昨年の評判が非常によく、不便なロケーションながらも今年も多くの人が集まった。国内外から75の出展者が参加し、改めて紙というメディアの可能性を提示した。

フェアは頑張らずに楽しむ

 「アーモリーウィーク」は大量のアートに一度に触れることのできる絶好の機会だが、すべてをくまなく見るのはなかなか難しい。気張らずに、歩きながらピンときたら足を止めてみるくらいが丁度いい。各フェアが開催しているツアーに参加するのもひとつの方法だ。専門ガイドのもと、1時間程度でフェアのハイライトを見て回ることができる。コレクターになった気分で好きな作品を探して回るのが、気楽にフェアを楽しむいちばんの秘訣かもしれない。

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