マンガで学ぼう!「アフォーダンス」ってなんだろう?
『学習まんが アフォーダンス』表紙

マンガで学ぼう!「アフォーダンス」ってなんだろう?

「思想としてのデザインを、デザインされたテキストへ」という理念を掲げたメディア「ÉKRITS(エクリ)」を運営する大林寛さんが、イラストレーターでマンガ家のコルシカさんと組んで『学習まんが アフォーダンス』を発行しました。「アフォーダンス」のマンガ化に至った経緯と、その後の反響を、大林さんにうかがいました。


アフォーダンスってなんだろう?

 「アフォーダンス」はアメリカの生態心理学者、ジェームス・J・ギブソンが1977年に提唱した認知システムです。アフォーダンス理論では、環境が提供する価値や意味を私たちが検索していると考えます。例えば、平らで広がりがあって、デコボコがない表面は「立つ」ことをアフォードします。この考え方は、1980年代以降のテクノロジーやデザインの分野に大きな影響を与えてきました。

 実感しにくい考え方ゆえ、間違った文脈で語られることもあり、認知科学者のドナルド・ノーマンは「使う人を混乱させるデザインは、アフォーダンスが正しく働いていない」と表現しました。しかし、本来アフォーダンスには良い悪いはなく、もとから環境にあるもので、私たちはそのなかから行為の可能性を選んでいるに過ぎません。

 筆者もかつてアフォーダンスに関する本を読んで、その世界観を理解するのに苦労したおぼえがあります。今回紹介する『学習まんが アフォーダンス』は、男の子と女の子の疑問に博士が答えるというかたちで、シンプルな例えをあげながら説明しています。スッと腑に落ちるところが多くて驚きました。一見こども向けと思いきや、大人にこそ読んでほしいような内容になっています。

ÉKRITS(エクリ)の大林寛さんにお話をうかがいました 

──アフォーダンスをマンガというかたちで紹介しようと思ったのはどうしてですか?

 まず先に「学習まんが」というコンセプトがありました。マンガ家のコルシカさんが「学習マンガ」をつくろうと思い立ち、僕のところに何かいいネタはないかと相談に来てくれたんです。コルシカさんは、小学館の「日本の歴史」シリーズや、戦前の教養マンガなどをベースに、現代版の学習マンガをつくってみたかったそうです。そこで僕が思いついたのが「アフォーダンス」でした。

 「アフォーダンス」を選んだ理由は、デザイン関係者と話をしても、デザイン学校で教えても、なかなか共通の理解に至れず苦労していたからです。けれど、マンガという形式でアプローチすれば、もっとうまく説明できると思ったんです。

scenario2.jpg『学習まんが アフォーダンス』のシナリオ

──大人にも読み応えのある内容だと思いました。ターゲットはどのような人を想定していましたか?

 中学生ぐらいを対象とした「学習まんが」というコンセプトで書きました。実際に読んで理解をしてもらうという意味では、もうすこし上の年代で、「アフォーダンス」という言葉を初めて聞く人たちを想定しています。

 そのなかでも、デザインを学んでいる人は、ジェームズ・ギブソンのアフォーダンスよりも、ドナルド・ノーマンのアフォーダンスを先に知る機会が多いんじゃないかと思います。しかし個人的には、考え方としてよりパワフルなギブソンのアフォーダンスだけを取り出して紹介したかったんです。この学習まんがでは、ノーマンについて一切触れていませんし、どの描写もノーマン的な解釈にならないよう、細心の注意を払いました。

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キャラクターのイラスト

──読者からは、どんな反響がありましたか?

 わかりやすかったとか、絵がかわいいといった感想が多かったです。他には、ストーリーがおもしろいとか、印刷の風合いがいいとか、学生時代にこんな本があればよかったなど、いろんな反応をいただきました。

──アートやデザイン関係者、また、「学習まんが」ということで教育現場からは?

 アート系の方は、コンセプトを評価してくださっているようでした。デザイン系では、やはりノーマンのアフォーダンスに触れられる方が多かったです。おそらくこれは、学者であるノーマンが専門用語を誤用したと知って、それを人に言わずにはいられないという衝動なんだと思いました。教育関係ではデザインだけでなく、演劇を教えられている方からも問い合わせをいただきました。

──この本はウェブ版と冊子版で販売しています。二つの方法で発表してみて、どのような手応えを感じていますか?

 今回は、僕が運営しているÉKRITS(エクリ)でウェブ版を公開するのと、冊子を印刷するタイミングを、ほぼ同時に行ったのですが、SNS経由でウェブ版を知って、その後に冊子へ興味を持ってくださる方が多かったようです。 書店は、まずコルシカさんや僕がよく通っているお店に委託販売をお願いしました。さらに店員さんたちがSNSで冊子を紹介してくださり、全国の書店から問い合わせをいただくまでになりました。

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あゆみBOOKS小石川店での陳列の様子 

これからの展開

 筆者もウェブ版を見て興味を持ち、冊子版を購入しました。懐かしい雰囲気の絵に、紙の質感が合っています。巻末には参考文献も載っているので、もっと深く知りたい人はここから興味のある本を選んで読んでみるとよいかもしれません。大林さんによると、同シリーズの続編も企画中とのこと。こちらも楽しみです。

『学習まんが アフォーダンス』
著者:原作・監修 大林寛、まんが コルシカ
発行元:ÉKRITS(エクリ)
価格:500円(税込)
URL:http://ekrits.jp/2015/09/1808/





 

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