江戸時代の仏像を救え! お寺がクラウドファンディング導入
十六羅漢のうちの1体《第三迦諾迦跋釐堕闍尊者》(江戸時代)

江戸時代の仏像を救え! お寺がクラウドファンディング導入

 「クラウドファンディング」という言葉を聞いたことがありますか? この仕組みは、インターネットを通じて不特定多数の人から寄附を募ることをいい、場合によっては「リターン」というかたちで、支援者にお返しをすることもあります。教育や途上国支援、震災復興支援といった社会問題を解決するために多く利用されてきましたが、近年ではアートや文化の分野で活用される事例が増えています。ここでは、仏像の修復にクラウドファンディングを取り入れた、初の試みをご紹介します。


山形県の寺院が始めたクラウドファンディング

16naname_s.jpg釈迦三尊像と十六羅漢像 江戸時代 永昌寺

 山形県西村山郡河北町にある永昌寺は、500年以上前に開かれた曹洞宗の寺院です。ここに伝わる江戸時代の仏像「木造十六羅漢像」が経年劣化のため損傷が進み、修復を必要としています。

 そこでクラウドファンディングで修復資金を集めることにしたのが、永昌寺の副住職の布川浩久さんと、地域文化財修復や保護支援をおこなっている「文化財マネージメント」代表の宮本晶朗さんです。仏像修復でクラウドファンディングを利用する例は今までなく、画期的な試みです。

 このプロジェクトはREADYFORという日本最大級のクラウドファンディングのプラットフォームを用い、一定期間内で、83万円の資金を集めることを第一目標に掲げています。2016年1月22日午前現在、すでに116万9千円と、第一目標は達成し、次の目標額143万円を目指しています。

 支援額に応じたリターンは十六羅漢ポストカード、手ぬぐい、またオリジナルパッケージのお米や日本酒など、地元のものも取り入れています。

仏像修復に全国からの関心、共感は集まる?

daisan_zentai_resized2.jpg十六羅漢のうちの1体《第三 迦諾迦跋釐堕闍尊者》(江戸時代)

 筆者がこのプロジェクトを知ったとき、地方の文化財保護に全国からの共感をどれだけ集めることができるか興味を持ちました。復興支援といった幅広い層に訴えかけるプロジェクトに比べ、仏像修復はターゲットもピンポイントです。

 そこで、プロジェクトの背景、どのようなかたちで支援を募っているのか、宮本さんと布川さんにお聞きしました。

eishouji.png「文化財マネージメント」代表 宮本晶朗さん(左)と、永昌寺副住職の布川浩久さん(右)

支援者はどんな人?

 まず、支援者の層について。宮本さんによると、約4割が「仏像ファン」という印象だそうです。事前にツイッターなどで、このような機会にお金を出すか、どのようなリターンが良いかなどのヒアリングをしてたので、想定通りの数字だとのこと。また、文化財修復の新しい手法への興味という意味で専門家から支援が集まっているのは、予想していなかったことだそうです。

 布川さんの実感では、ご友人のお坊さんが多いようですが、特に理由もなく多額の支援を申し出た一般の方もいたそうで、思わぬところからのリアクションに勇気づけられたというコメントをいただきました。

しかし難しさも......

 一方、クラウドファンディングには難しさもあります。仏像修復に関心を持つのは高齢者層が多く、クラウドファンディングを利用するのは若い層です。このミスマッチは、宮本さんはあらかじめ想定していました。

 しかし、このプロジェクトが全国紙や地元紙で紹介されることで、高齢者の関心も高まると期待していましたが、即効性は感じられなかったそうです。認知は広がっても支援にまでつながらない点が課題だと、宮本さんも布川さんも考えています。

地域の反応は?

 《木造十六羅漢像》に一番身近な檀家さんや地元の方の反応はどうだったでしょうか? 好意的な応援を感じたものの、金銭的支援に結びついているとは限らないというのが布川さんの感想です。

 宮本さんは、寺院や檀家が費用を負担するのが基本だとしつつ、歴史的には、東大寺の大仏修復に勧進というかたちで一般人から資金を募っていたこともあり、このプロジェクトも「現代版勧進」ととらえるのが自然な流れだと思う、と答えてくれました。

地域の仏像修復から見える社会の問題

16_syomen_s.jpg釈迦三尊像と十六羅漢像 江戸時代 永昌寺

 また、このプロジェクトは、過疎化や高齢化の問題もはらんでいます。宮本さん自身、過疎地域の文化施設の学芸員として文化財保護を行ってきました。なかには、6軒の檀家さんだけで管理している寺院もありました。

 修復資金が足りず修復が十分なされず、寂れていってしまうことで、地域の人たちがその価値を認識できなくなってしまうこともあります。そこで有効だったのが、県外の人に見にきてもらい、関心を持ってもらうことでした。そのことが地元の人びとの自信につながっていった例もあったそうです。

 インターネットで地域を超えて周知することのできるクラウドファンディングは、地域外からの関心を集め、文化財を管理している地元の人とモチベーションを上げる特性があると、宮本さんは期待しています。

 永昌寺のプロジェクトがひとつの成功例となれば、文化財保護や修復、さらには過疎や高齢化社会の問題にも新しい解決方法が提案できるかもしれません。今後の展開が楽しみです。

プロジェクト「江戸時代から山形に伝わる、運慶の流れをくむ仏像を修復したい!」
   http://bunkazai-mgt.jp/文化財マネージメント)
会期:2016年1月24日23時まで
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