パリ市がお勧めする「文化遺産散歩」!第一次世界大戦編
散歩のスタートは凱旋門!

パリ市がお勧めする「文化遺産散歩」!第一次世界大戦編

第一次世界大戦の開戦から今年で100周年。フランスでは2014年から2018年にかけて、様々なイベントや展覧会が開かれています。今回ご紹介するパリ市提案の「文化遺産散歩」もその一環。街中にあるモニュメントやオブジェを観て回ることで、戦中から戦後にかけて、フランスの首都がどのような歴史を歩んできたのかを散歩しながら学ぼうという企画です。


第一次世界大戦の舞台となったパリの街を歩く

 ドイツ、オーストリア、イタリアからなる三国同盟とイギリス、フランス、ロシアの三国協商の対立から起こった第一次世界大戦は、それまで見られなかった兵器体系を導入し、またヨーロッパのほとんどの国を巻き込むなど、国家総力戦と呼ばれる人類史始まって以来の大規模な戦争だったと言われています。

 1870年の普仏戦争で敗れてから、ドイツと険悪な関係が続いていたフランス。世界大戦でありながらも世論の関心は、ドイツ一国に集中していました。戦線から遠く離れているかのように見えたパリは、1918年の3月、ついにドイツ砲兵隊に砲撃されます。これによって多くの市民の命が奪われただけでなく、たくさんの建築物が破壊されました。

 そして、パリとその近郊都市は、ドイツと連合国の休戦協定(1918)や終戦翌年のヴェルサイユ条約(1919)の締結、そして勝利の祝賀パレードの開催など、第一次世界大戦における重要な舞台となります。パリには、第一次世界大戦に関わった人物の像や記念碑などが多く点在します。今回、パリ市が提案する「文化遺産さんぽ(徒歩コース)」の9か所を、実際に歩いて回ってみました!

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出典:Le Paris de la grande guerre(パリ市庁舎ウェブサイトより第一次世界大戦のパリの地図)
https://filer.paris.fr/quefaire/uploads/files/Balade%20FR%20DEF%20%28WEB%29%281%29.pdf

① 8区 凱旋門:《無名戦士の墓》

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凱旋門の下に眠る戦士の墓

 スタートはエトワール凱旋門から。凱旋門の下には第一次世界大戦中に亡くなったすべての兵士を代表して、身元が特定できなかった一人が葬られています。お墓の一角に灯された炎は1923年に点灯されて以来、一度も絶やされたことがありません。

② 8区 ジョルジュ・クレマンソー像

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フランソワ・コニエ クレマンソー像 1932

 シャンゼリゼ大通りを西から東に歩いていくと、クレマンソー広場の一角に、1932年に完成したジョルジュ・クレマンソー(1841〜1929)の像が見えます。クレマンソーは連合軍を勝利に導き、パリ講和条約で議長を務め、フランスの立場を強く主張した政治家として知られています。この像の作者は彫刻家フランソワ・コニエ(1876〜1952)。彼はクレマンソー像の制作にあたって、ルーブル美術館にあるサモトラケのニケをイメージしたそうです。

③ 8区 コンコルド広場前:ベルギー王アルベール一世の騎馬像

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フランス国内から圧倒的支持を受けたベルギー王、アルベール一世

 中立国だったベルギーは、ドイツがフランスに侵攻するために国内を通過することを強く反対。その中心人物だったアルベール一世(1875〜1934)はフランス国内から多大な尊敬を集めました。急逝した国王を偲ぶ多数の声から、この像は建てられました。

④ 8区 コンコルド広場:ストラスブールとリールの擬人像

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コンコルド広場にある、左はリールの擬人像、右はストラスブールの擬人像

 オベリスクで有名なコンコルド広場には、フランスの八大都市を表した女神像が置かれています。ストラスブールとリールは第一次世界でドイツの占領下から奪還した都市。その擬人像は戦後に崇拝の対象となりました。

⑤ 9区 オペラ・ガルニエ座前:カフェ・ド・ラ・ぺ

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オペラ座前の高級カフェ「カフェ・ド・ラ・ぺ」の外観

 創業1862年、パリオペラ座の目の前にある、文豪エミール・ゾラやモーパッサンにこよなく愛された、言わずと知れた高級カフェ。1914年、クレマンソーはこの2階から前線に出発する兵士を見送ったそうです。

⑥ 4区 パリ市庁舎裏:サン=ジェルヴェ・サン=プロテ教会

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サン=ジェルヴェ・サン=プロテ教会では、ミサの最中にドイツ軍の砲撃を受けた

 市庁舎の裏にひっそりとたたずむこのゴシック建築様式の教会は、1494年に着工し、1675年に完成しました。1918年3月29日、ミサの最中に砲撃を受けたため、教会内には被害者慰霊のチャペルがあります。

⑦ 5区 第5区役所

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第5区役所の外観

 第5区役所の「思い出の間」にはフランスの画家エミール・オブリ(1880〜1964)の《戦没者へのオマージュ》(1933)と題する絵画が掛かっています。戦死した兵士を優しく抱える女性の姿が、ミケランジェロの《ピエタ》(1475〜1564)を想起させるとも言われる同作は、記念イベントや特設展の開催時にあわせて一般公開されます。今回は公開時期ではないため、中に入れず、実際に見ることはかないませんでした。

⑧ 7区 サン・フランソワ・グザビエ教会:戦没者の礼拝堂

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アンリ・ピエタの大作《第一次世界大戦戦没者へのオマージュ》(1921)は、礼拝堂の壁に対になって描かれている

 この教会の中の礼拝堂には、戦没者にささげられた《第一次世界大戦戦没者へのオマージュ》)(1921)という2枚1組の絵画があります。制作したのは画家のアンリ・ピンタ(1856〜1929)。国のために犠牲になったフランス国民の姿を、キリストの受難に重ね合わせており、両図とも幅6メートルの大作です。1921年に完成。

⑨ 7区 ヴォーバン広場:ガリエニ像

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ジャン・ブーシェ ガリエニ像 1926

 1916年に亡くなった軍人ジョゼフ・ガリエニ(1849〜1916)は第一次世界大戦の功績者として知られています。彫刻家ジャン・ブーシェ(1870〜1933)が手掛けたこの像は、1926年に完成しました。ガリエニを下から支える4人の女性の立像は、ガリエニが現役時代に活躍した場所、それぞれ「トンキン」と呼ばれたベトナム北部、スーダン、マダガスカル、パリを表示しています。

市民の日常の中に隠れた歴史をしのぶ「名所」

 ご紹介した9件を巡るための所要時間はおよそ5時間。歩きやすい靴で、休み休み、ゆっくり回ることをお勧めします。散歩コースには含まれていないため今回は省きましたが、パリ市では第一次世界大戦にまつわる文化遺産として、他に4件のモニュメントを紹介しています。

 今回訪れた場所は、必ずしも多くの観光客が訪れるような名所ではありません。街にさりげなく置かれている作品にもパリの歴史が詰まっているのだな、としみじみ感じました。みなさんも次回のパリの旅行では、「文化遺産散歩」第一次世界大戦編を活用して、いつもとちょっと違う名所を訪れてみてはいかがでしょうか?

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