キュレーターに聞く! 「展覧会のアイデアはどこからくるの?」

キュレーターに聞く! 「展覧会のアイデアはどこからくるの?」

アーティストの作品をより多くの人に見てもらったり、理解してもらったりするよう工夫して展覧会を企画する、「キュレーター」という仕事は、社会の状況や流れを敏感に読み取って、「今こそやるべき」企画を考えていくアート界のナビゲーターともいえる存在です。そんなキュレーターの中でも若手として注目されている、長谷川新さんの仕事術を追いかけてみます。


 次世代キュレーターとして期待されている、長谷川新(はせがわ・あらた)さんは現在27歳。フリーランスとして関西を中心に活動し、戦前の美術作家から同世代の作家まで幅広く扱います。今回、彼に話を聞いてみました。

キュレーションは「物質の移動」

──アートにおけるキュレーションとは、あらゆる場所に存在する「美術作品」と呼ばれているものをひとつの企画、すなわち物語やテーマの元にまとめて見せることだと思うのですが、いかがでしょうか。

 そのように言われていますが、最近は「キュレーターは物質の移動しかしていないのではないか」と強く感じています。

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「無人島にて─『80年代』の彫刻/立体/インスタレーション」展より 椎原保 撮影=草木貴照

キュレーターにとって欠かせないのは、知識と情報の吸収、人との出会い

──展覧会企画アイデアは、どのようにして生まれるのですか?

考える、本を読む、気になった一文をノートにしたためる、考える、ふと思いつく......。企画の柱にするため、何を引用するか決める。そのとき、自分の考えと本の一文と、本の中身が分離していきます。そして作家に声をかける。そんな感じで、展覧会の企画はできています。

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仕事にはiPhoneとMacbook Air、そしてアイデアを書き留めるノートは赤いジーケンスを愛用

──アイデアを生み出すための源となるものはなんですか?

 読書と、人との出会いですね。本は、最近は仕事が忙しいこともあって2日に1冊のペースになっていますが、専門書から小説までなんでも読みます。

──一方の「人との出会い」についてですが、どのようなところで出会うのでしょうか。

 たとえ作家と名乗っていなくても、おもしろい人はどこにいってもいるなぁと感じます。会いに行ける機会があるなら、会いに行くようにしています。幸い、私は紹介してくれる人に恵まれており、さまざまな人と出会うきっかけを与えてもらっています。ありがたいことです。

──たしかに長谷川さんはフットワークが軽く、国内各地に出掛けている印象があります。では、アーティストとキュレーターの理想の関係は、どのようなものだと考えていますか。

 私は、自分の好きな作家がいたとして、「その人の人生に自分が含まれていれば嬉しいなぁ」というくらいの感覚でいます。その上で、お互いにやりたいことを突き詰めあえればいいですね。その結果、また同じ作家と一緒に展覧会をやることもあるかもしれないし、その結果の展覧会かもしれない。別に展覧会というかたちにとらわれなくてもいいかもしれないのでは、と考えています。

──展覧会は、キュレーターとアーティストの対話と協働の結果であるとも言えそうですね。最後に、新しいひらめきを与えてくれそうな長谷川さんおすすめの本を5冊教えてください。

・村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』
・大江健三郎『万延元年のフットボール』
・稲垣足穂『一千一秒物語』
・赤坂真理『東京プリズン』
・中井英夫『虚無への供物』

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「北加賀屋クロッシング2013 MOBILIS IN MOBILI ─交錯する現在─」金沢巡回展  
© Courtesy of Kitakagaya Crossing Organizing Committee

 今秋、長谷川新さんがキュレーションに関わっている2つの展覧会が東京で開催されます。キュレーターとアーティストの協働にも注目して見てみるのはいかがでしょうか。

「Celcius[セルシウス]」展
CASHI(=華氏)は若手作家の可能性が示す新時代の温度を感じとってもらうことをコンセプトとしている中で、
それに対比するようなCelcius(=摂氏)というタイトルで、新たな空間がの演出を試みる。

会期:2015年8月20日~9月27日
場所:CASHI
住所:東京都中央区日本橋馬喰町2-5-18
電話番号:03-5825-4703
開館時間:11:00~19:00
休館日:月火水
URL:http://cashi.jp/lang/ja
企画:大下裕司、長谷川新、松島英理香
参加作家:参加作家:福居伸宏、新平誠洙、hyslom、宮崎直孝、田中真吾


すくなくともいまは、目の前の街が利用するためにある
若手キュレーターを紹介する新シリーズ「doubles(第1回目)」、今後活躍が期待される若手キュレーター2名共同キュレーションを行う企画。タイトルの「利用する」という言葉の暴力性をどのように引き受けるかという点がキーワードとなっている。

キュレーター×アーティスト:長谷川新×武田雄介 趙純恵×川村麻純
会期:2015年9月11日~10月19日
場所:waitingroom
住所:東京都渋谷区恵比寿西2-8-11渋谷百貨ビル3F
電話番号:03-3476-1010
開館時間:(月)17:00〜23:00 (金・土・日)13:00〜19:00
休館日:火水木
URL:http://www.waitingroom.jp/
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